士業事務所の電話受付をAIで補助する設計
士業事務所のAI電話受付は、相談へ回答する役割ではありません。新規相談と既存依頼を分け、担当者が次に判断するための情報を受け取る役割に限定します。
最初に決めるのは、AIが聞く質問ではなく受付後の行き先です。着信は四つに分けてください。分類先は新規相談と既存依頼、期限のある連絡、営業電話です。まず直近一か月の着信を分類します。
新規相談は分野と連絡先だけを受け付ける
新規相談では、相談分野と希望する連絡方法を確認します。氏名と電話番号に加え、折り返し可能な時間を受け付けます。詳しい経緯を最初から話させないでください。
事務所が扱う分野に当てはまるかは、承認済みの分類で確認します。相続、登記、税務などの大分類です。個別の見通しや費用をAIが判断しないよう、回答できる案内を営業時間や相談予約の方法へ限定します。
日本司法書士会連合会の業務の案内では、他の法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士以外が行えない業務を説明しています。これは司法書士についての例で、士業全体に同じ規則を当てはめるものではありません。対象資格の業務範囲を確認し、電話AIを専門判断の代替にせず、資格者が判断する受付へつなげてください。
既存依頼は本人と案件を先に特定する
既存の依頼者からの電話では、相談内容を聞く前に案件を特定します。受付番号や担当者名を確認し、本人確認に必要な項目を事務所の規程に合わせます。
本人を確認できない段階で、案件名や進捗を読み上げません。家族や会社の同僚からの電話も、依頼者本人と同じ権限があるとは限りません。伝言を受けるか、資格者へ接続するかを決めます。
折り返し受付には、担当者と希望時間を残します。担当者不在時に別の資格者へ回せるかも確認してください。案件情報へアクセスする人を広げず、通知先を事前に定めます。
期限は申告された日付として記録する
裁判所や行政機関から届いた書面、申告期限、契約上の期日などは早い対応が必要です。ただし、電話AIが法的な期限を計算したり、間に合うと判断したりしてはいけません。
発信者が伝えた書面名と日付を、そのまま申告情報として記録します。「期限は明日との申告」のように、事務所が確認した期限と区別してください。書面の内容を推測して要約しません。
期限の申告がある電話は、通常の折り返し待ちと分けます。担当者が応答できない場合は、別の確認担当へ通知します。何時までに確認するかを受付状態へ残してください。
AIが答える案内を固定する
AIが回答できるのは、事務所が承認した一般案内です。営業時間と所在地に加え、相談予約の方法や必要書類を確認する窓口を登録します。
「この手続きが必要か」「依頼すれば認められるか」といった質問は専門判断へつなげます。料金も一律に確定できない場合は、相談後に見積もる旨だけを案内します。過去の案件から似た回答を生成させないでください。
IVRyの士業向け電話受付では、用件の一次受付に加えて予約や通知が用途として紹介されています。機能の有無だけでなく、自動回答と資格者への折り返しを用件ごとに分けられるか確認します。
録音と通知は閲覧者を限定する
新規相談の用件や既存案件の伝言には、本人の事情が含まれます。個人情報保護委員会の通則ガイドラインは、音声による情報も個人情報になり得ると説明しています。
録音、文字起こし、要約の閲覧者を分けます。全職員へ同じ通知を送らず、相談分野または担当案件に応じた通知先へ渡してください。通知本文へ詳細を載せず、安全な管理画面で確認する方法も検討します。
司法書士には法律上の秘密保持義務があることを、日本司法書士会連合会のプライバシーに関する案内が説明しています。資格や事務所ごとの規程を確認し、電話システムの提供会社と保存先を整理します。閲覧権限と削除方法も契約前に確かめてください。
六つの電話で受付境界を確かめる
開始前には、受け付ける電話と答えない電話を同じ回数だけ試します。次の六つを用意してください。
- 新規相談の分野と折り返し時間だけを受け付ける
- 既存依頼者を案件番号から担当者へ振り分ける
- 本人確認できない家族から伝言だけを受ける
- 期限があるとの申告を優先通知へ切り替える
- 専門判断を求める質問へ回答せず折り返しにする
- 営業電話を依頼者の受付へ混ぜず終了する
六件とも、録音と文字起こしに不要な情報が残っていないか確認します。通知先と折り返し期限も受付結果から追ってください。
直近一か月の着信を四つに分け、資格者でなければ判断できない質問へ印を付けます。その質問をAIの回答対象から外すことが、最初の設計作業です。