AI電話の音声品質は、声が人らしく聞こえるかだけでは判断できません。利用者の発言を正しく受け取り、待たせすぎずに返答し、言い直しを最終結果へ反映できることが必要です。実際の電話回線と利用環境で、会話の入口から記録までを一件ずつ確認してください。

音声の聞こえ方とAIの認識結果も分けます。人には明瞭に聞こえていても、固有名詞や数字が誤って記録されることがあります。逆に、ネットワークの揺らぎで音が途切れ、認識以前に発言の一部が届かない場合もあります。

実際の電話回線と端末で試す

音声ファイルや管理画面の試聴だけで合否を決めません。本番で使う電話番号へ発信し、固定電話と携帯電話で同じ文章を話します。オフィスの静かな席だけでなく、一般的な生活音がある場所も一つ加えてください。

AIが生成した元音声と、電話越しに聞こえた音は同じとは限りません。Google Cloud Text-to-Speechの音声プロファイルには、電話向けの再生条件があります。公式説明も、調整に使った機器と実際の再生機器は一致しない可能性があるため、試行が必要だとしています。

通話ごとに端末と回線、場所、時刻を残します。同じ台本で片方だけ聞き取りにくい場合は、会話設定より先に通信経路と端末を疑えます。スピーカーフォンを使う業務なら、その状態も別の条件として試してください。

聞こえ方と認識結果を分ける

評価者は、まず録音を聞いて発言が明瞭だったかを付けます。次に文字起こしと取得項目を確認します。人に聞こえた言葉とAIが認識した言葉を分けると、回線の問題と音声認識の問題を混同しません。

Twilio Voice InsightsのCall Summaryは、パケット損失を音切れ、ジッターを雑音や機械的な音の原因として説明しています。一方で、ジッターバッファなどにより指標より主観的な聞こえ方が良い場合もあります。通信指標だけで合格にせず、同じ時刻の録音と照合してください。

評価票には「相手の発言が人に聞こえたか」「文字起こしが合っていたか」「業務項目へ正しく保存されたか」の三段階を置きます。録音で欠けていれば通信経路を調べます。録音は明瞭で文字だけ違う場合は、認識設定や用語の登録を確認します。

応答までの時間を四つに分ける

利用者が話し終えてからAIの声が始まるまでを一つの遅延にしません。発話終了の判定と音声認識を分けます。回答処理と音声再生も別の時刻にしてください。各時刻を取れない製品では、録音上の発話終了から回答開始までを測り、外部連携の有無も添えてください。

Amazon Connect Customerの音声エージェント設計は、発話終了の設定を早めると遅延を抑えられる一方、利用者の間を発話終了と誤認する可能性を示しています。また、外部処理が長い場合は無音の待ち時間が生じるため、実際の処理を含む端から端までの確認を求めています。

短い「はい」と、数字を区切って話す場面では適切な待ち時間が異なります。全会話へ一つの設定を当てず、取得する項目ごとに確認してください。速さを上げた結果、利用者の発言を途中で切っていないかも同時に見ます。

固有名詞と数字は正解を先に置く

会社名と氏名を含む固定台本を作ります。商品名と日付、電話番号も入れてください。正解の表記を先に決め、文字起こしと最終記録を照合します。似た音の名称と、同じ数字を異なる区切り方で話す例も用意してください。

Google Cloud Speech-to-Textのモデル適応は、頻出語や固有名詞などの珍しい語を認識しやすくする仕組みです。雑音がある音声にも利用できると説明しています。ただし、すべてのモデルが対応するわけではありません。候補製品では、用語登録の単位と適用範囲を確認してください。

誤認識を見つけたら、用語を追加して終わりにしません。追加前に正しく認識できた似た語も再試験します。特定の名称へ強く寄せた結果、別の発言まで同じ語に置き換わっていないかを見るためです。

訂正と割り込みを別に確認する

利用者が「十日、ではなく十一日です」と言い直した通話では、最後の値だけが記録されることを確認します。AIが最初の値を読み上げている途中に訂正した場合も試してください。聞き返しが成功しても、CRMへ古い値が残るなら業務としては不合格です。

Dialogflow CXのBargeInConfigは、AIの音声再生中に利用者の発言を検知し、再生を止めて次の入力を処理する区間を設定します。Amazon Connect Customerの公式説明も、通常の会話では割り込みを許可し、録音案内や確認文では無効にする使い分けを示しています。

割り込みと無言の再案内を同じ失敗にしないでください。利用者が話してAIを止めたのか、発話終了の判定が早すぎてAIが先に話したのかを録音とイベントで分けます。必ず聞いてもらう案内は割り込み不可にし、その直後の訂正は受け付けられる状態へ戻します。

六つの通話で変更前後を比べる

音声や認識設定を変えた後は、問題が出た一通話だけを再生しません。次の六つを同じ端末と回線で試します。

  1. 静かな場所から標準的な速さで会社名と氏名を話す
  2. 生活音がある場所から同じ内容を話す
  3. 商品名と数字を一度だけ伝える
  4. 数字を途中で言い直し、最後の値を確認する
  5. AIの案内中に質問し、音声を中断する
  6. 文中で一秒ほど間を置き、AIが発言を切らないか確認する

各通話では、聞こえ方と文字起こしを残します。最終記録と回答開始までの時間も必要です。訂正と割り込みは最終状態も確認してください。通信指標が取れる場合は、録音で問題が起きた時刻へ重ねます。

最初の作業は、本番で頻出する会社名と商品名を選ぶことです。数字も一つ選び、正解付きの短い台本を作ります。携帯電話と固定電話から同じ内容を話し、聞こえ方と認識結果を分けて記録してください。直す項目は一度に一つにし、六つの通話で悪化がないことを確かめます。