AIコールセンターの録音案内を業務別に決める
AIコールセンターの録音案内は、すべての窓口へ同じ音声を流せば終わりではありません。録音する目的と通話で扱う情報を業務ごとに分けます。その上で、案内する位置と録音を望まない相手への経路を決めてください。
個人情報保護委員会のFAQは、通話内容から特定の個人を識別できる場合は個人情報に該当すると説明しています。個人情報保護法上は利用目的の通知または公表が必要ですが、録音している事実を伝える義務までは負わないとしています。
録音案内の必要性は、適用される規則や契約によって変わります。自社方針も判断に影響します。この記事は個別の適法性を判断するものではありません。業務ごとの事実をそろえ、法務担当者へ確認するための手順です。
録音目的が異なる窓口を分ける
最初に、電話番号やキューごとに録音目的を一つ書きます。一般的な問い合わせでは応対内容の確認が中心です。苦情窓口では事実関係の保存が必要になり、発信業務では説明内容の検証が目的になることがあります。
同じ番号で複数の業務を受ける場合は、用件を確認した後に録音目的が変わる可能性があります。一次受付の録音を品質評価へ使い、本人確認後の会話は取引記録へ残す構成なら、利用目的と閲覧者を分けてください。
公的機関の実例として、個人情報保護法相談ダイヤルは相談内容を正確に把握する目的で録音すると案内しています。目的を達成した後は録音データを速やかに削除することも示しています。自社でも目的と削除条件を一続きで決めると分かりやすくなります。
受電と発信で案内する位置を変える
受電では、IVRやAIが応答した直後に録音案内を置けます。ただし、案内の途中で用件や個人情報を話し始める人もいます。案内前から録音するのか、案内後に開始するのかをシステム仕様で確認してください。
発信では、相手が電話へ出た後に事業者名と用件を伝えます。録音案内を入れる場合は、その前後で何が記録されるかを決めます。留守番電話や第三者が応答したときに、録音目的や顧客情報を不必要に話さない台本も必要です。
案内音声の長さだけで省略を決めないでください。相手が理解できる言葉と順序を法務担当者へ確認します。案内が聞こえなかった場合に、AIまたはオペレーターが同じ内容を説明できるようにします。
本人確認情報を録音から外す
本人確認では、生年月日や住所などを聞く場合があります。必要な確認項目だけを扱い、録音へ残す範囲を決めてください。AIが聞き取った結果を文字起こしへ残す場合は、その保存先と閲覧者も確認します。
カード番号を電話で扱う窓口は、一般的な録音運用と分けた方が良いです。PCI Security Standards CouncilのFAQは、承認後のカード検証コードを音声録音へ保存することを認めていません。技術的に可能なら、入力中の録音を抑止またはマスキングするよう示しています。
機密情報を「あとで削除する」運用だけに頼らず、最初から録音しない経路を作ります。DTMF入力や決済専用の別システムへ切り替えるときは、切り替え前後の録音状態を試験してください。
録音を望まない相手の経路を用意する
録音案内をした後、相手が録音を望まない場合の選択肢を決めます。録音を停止して応対を続けられるのか、別の窓口へ案内するのか、通話を終了するのかを業務ごとに選びます。
録音停止を管理画面で操作できても、文字起こしやリアルタイム要約が続く製品があります。録音と生成処理を別々に停止できるか確認してください。停止後の会話がCRMへ自動転記されないことも試します。
苦情や緊急の連絡では、録音拒否を理由に一律で受付を終了すると業務目的を果たせない場合があります。代替経路が必要か、法務担当者と業務責任者の両方へ確認した方が良いです。
品質評価に使う範囲を決める
録音を品質評価へ使う場合は、評価対象と閲覧者を決めます。全通話を長期保存することと、必要な通話を抽出して評価することは別の運用です。評価が終わった録音をいつ削除するかも記録します。
AIによる自動評価を使う場合は、録音から作られる文字起こしと評価結果を分けてください。評価者が元の音声を聞けるのか、担当者が結果へ異議を伝えられるのかも確認します。目的を追加するときは、すでに公表している利用目的との整合を法務担当者へ相談してください。
個人情報保護法ガイドラインの通則編は、安全管理措置と従業者の監督、委託先の監督を示しています。AIコールセンターの提供会社だけでなく、品質評価や文字起こしを処理する委託先まで確認範囲へ含めます。
六つの通話で本番前に確かめる
本番同等の番号と設定を使い、次の六つの通話を行います。
- 受電して録音案内を最後まで聞く
- 発信先の本人が応答し録音案内を聞く
- 発信先で第三者または留守番電話が応答する
- 相手が録音を望まないと伝える
- 本人確認から機密情報の入力経路へ切り替える
- 苦情対応を有人窓口へ引き継ぐ
各通話で、案内前後の録音と文字起こしを確認します。録音停止後の生成データも対象です。CRMと品質評価画面へ何が残ったかまで照合してください。
最初の作業は、録音目的が異なる電話番号またはキューを一つ選ぶことです。その業務で扱う情報と案内の位置を決めます。録音を望まない場合と機密情報を扱う場合の経路も付け、法務担当者へ確認を依頼してください。